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彼岸入りをして暖かくなってまいりました。一方で世界を騒がせている新コロナウイルス、1日でも早く収束してもらいたいと願うばかりです。
前回のブログで予告したように、今回は「はんこ屋の使うはんこ」について書いてみます。私は下記の3本を使っています。
1.実印 象牙・直径15ミリ、長さは45ミリで鞘付(さやつき、キャップ付きのことです) 印鑑ケースは腹ワニ革。書体は太字の篆書。姓名のフルネーム彫り。3年間の修行を終える時に、師匠が文字の字入れ⇒私が荒彫り(あらぼり)⇒師匠が仕上げの作業。こんな流れで実印は出来上がりました。どの弟子たちも修行を終える時に、師匠が象牙で作ってくれるのが伝統でした。
2.銀行印 象牙・直径12ミリ、長さは45ミリ。ケースはトカゲ革。書体は細字の篆書。姓のみの彫り。中学3年の時に、父が作ってくれました。まだ、昭和の時代だったので、篆書でも細字の篆書でした。洋服ほどの流行はありませんが、はんこの作風も戦前から昭和の40年代くらいまでは、はんこ屋でも細字の篆書を提案していました。今は、お客様のご指定のない場合は吉相体(きっそうたい)が主流になっています。
3.仕事印 黒水牛・直径10.5ミリ、長さは60ミリ。ケースは牛革、金枠付きでなく、小銭がま口タイプの形状。書体は太字の篆書。姓のみの彫り。シャチハタ式では不可、という場合が出てきて、30歳を過ぎたころに作りました。このはんこだけが長さ60ミリです。現在ははんこの長さはほとんど、60ミリになりました。
文字は3本とも、篆書(てんしょ)です。やはり、伝統的な書体を使っています。
世の中に流行している吉相体(きっそうたい)は、使っていません。20世紀になって出てきた書体なので、自分用には取り込むことに踏み切れていません。
墨田区の両国で3年間、印鑑彫刻の修行をしましたが、この時、師匠がお客様によく言っていた言葉に、「我々、はんこ屋は、吉相体(印相体とも言う)は使っていないんですよ。」でした。
ご来店のお客様から「印鑑に印相があるって、本当なんですか?」と聞かれての答えがこの言葉でした。大切なのは、お使いになるお客様がご自分のお好みに合った書体を選ぶことだと考えます。店頭では、お客様がお決めやすいように印材(象牙や黒水牛・つげなど)・文字や、書体のご説明は十分にさせていただいております。
素晴らしい印章ですね。
それぞれの思い出の込められた唯一無二のもの。
ハンコはその人の履歴書のようでもありますね^ ^