──── 八王子で印鑑を作り続けて110年 ────
こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。
先日、印鑑に造詣の深いお客様が見えました。1時くらいお話をさせていただきました。私のほうが聞き役に回るくらいでした。横浜市からお見えで、仕事柄、全国を回りながら、印判店(はんこ屋)を70軒ほど巡ったというお話しをいただきました。
「丹、鞘(さや)の印材は置いていますか」と聞いて、出して来たはんこ屋は20軒だったそうです。丹、鞘(さや)の印材とは、丹は、捺す時に上がわかるように印材にうめ込まれた金や銀の小さな長方形のこと、鞘(さや)は、彫刻面を保護するためのキャップです。20軒のはんこ屋の中で、象牙印材の丹、鞘を出したのは12軒ほどだったとのことでした。
はじめは2本の印鑑をお持込になって、印鑑彫りなおしが目的のお客様でしたが、話し合っているうちに、象牙の丹、鞘(さや)の印鑑もご注文になりました。お話をさせていただいていて、お客様と話している、というよりも同業のはんこ屋、問屋と話している、という感覚でした。業界の専門用語もご存知でびっくりでした。やはり70軒のはんこ屋を回れば、自然と業界通になるものかと思いました。
印材に止まらず、印鑑の作風もよくご存知でした。「太字の篆書でなく、外枠の太い細字の篆書で作って下さい」といった具合です。今は、太字の篆書が主流(個人の印鑑)ですが、戦前から昭和30年代くらいまでは細字が主流でした。今は、細字の篆書は正方形の角印(法人用など)に使われています。
遠方からお越しいただく、このような見巧者(みごうしゃ)のお客様、大切にしていきたいと思います。
▲象牙印材(直径15ミリ、長さ60ミリ)の丹、鞘(さや)です。
右端は銀丹、中央と左端は金丹入りです。
お値段は、わに革ケース付きで、銀丹126000円、金丹147000円です。
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