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先週、メールでお問い合わせがあり、「印鑑の外枠だけを細くしたい。」というご希望でした。4本の印章(印鑑の本体)が送られて来ました。2本はフルネームの実印、あと2本は姓のみの銀行印でした。拝見したところ、男性のお名前入りの実印は、枠が太すぎることに加えて、下のお名前3文字の章法(しょうほう)がよろしくなく、ご了解をいただいて、一度平面にして彫り直しさせていただくことにしました。章法とは、篆刻三法の一つで、一つの印(いん)の中に割り当てる文字の面積のバランスです。お客様からのご了解をいただけたので、下のお名前のみを出しますが、「晋太郎」さんというお名前で、「太」の面積を狭く、「晋」と「郎」の面積を広く取ることが、この仕事での正しい章法になります。画数の少ない文字は狭い面積に入れて、丁度よいバランスになります。
お預かりした実印は、3文字とも同じ面積、むしろ、「太」の面積が広い位でした。これだと、「晋」と「郎」の文字がつぶれてしまいます。彫り直す時に、「太」の文字を画数の少ない文字にして他の2文字が楽に見えるようにしました。
銀行印の直径13.5ミリの印鑑は、外枠だけを細くすれば、印影はなんとか行けそうでしたが、彫刻面を見たら、なんとも彫りが浅く、「これではお客様がお気の毒」と思い、一度平面にして深く彫り直しました。残る2本は、仕上げ刀で外枠を細くしつつ、文字が外枠と平行にくっついてしまった箇所は、一番細い荒彫り(あらぼり)用の印刀を使って、文字を外枠から切り離しました。
お客様からのメールに「ネット通販で印鑑を購入しましたが、」と書いてありましたが、印章彫刻一級技能士の私から言わせていただくと「この印鑑を作った人は、はんこの作り方を知っているのかな?」と思いました。お値段が安いからかもしれませんが、これではお客様が気の毒過ぎます。お値段は、送付前に見積もったままで、彫り直し2本のお値段はいただきませんでした。日々の仕事で、印鑑作りの基本に忠実、さらに当店、楽善堂の色を出せる仕事をして行きたい、そんな思いを強く持ちました。
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