東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
印鑑の楽善堂 四代目店長 平澤 東のブログ



文字の中心部が印字できない黒水牛角印

2025年04月19日 お知らせ

印鑑 八王子 楽善堂
──── 八王子で印鑑を作り続けて125年 ────

こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。

 昨日、ご来店のお客様で、こんな方がいらっしゃいました。「はんこの真ん中が紙に付かない。」拝見したら、1辺21ミリの黒水牛の角印でした。角印に限らず、黒水牛、白水牛は中心部に芯があり(この芯があるために強度あり)、芯の部分は、へこんでいます。彫る前に印面調整といって、芯の部分をやや高くしてから彫ります。経年変化で芯が落ち込んでいくこともあります。

 はじめは、トクサ板かけて彫刻面を削って、外周部分が下がり、芯の部分が上がるように調整して差し上げようと思いました。お客様が帰ったあと再度紙に印字してみたら、文字が外枠に付いている、という不具合も見つけました。お客様にお電話を入れて、状況を説明、リフォーム、(彫り直し)をさせていただくことにしました。


 「インターネットで安く作ったんだけれど。」とお客様はおっしゃいました。職人の私としては「よくまあ、ここまで手抜きができたなあ。」というのが正直なところです。「安物(やすもの)買いの銭失い」という諺がありますが、お客様にとって、「銭失い」となるよう仕事はしたくない、そんなことを思った今回の仕事でした。

▲左はお客様がお持込みの角印の印影です。見事に中心部分が印字できません。右は当店で彫り直した後の印影です。会社名の部分はホワイト修正液で消してあります。矢印の部分、3ヶ所は文字が外枠に付いてしまった部分です。右の印影の矢印部分は外枠から離れています。
▲黒水牛1辺21ミリの角印です。当店の印材です。
彫る前に印面調整をして中心部をやや高く作るのも
職人の仕事の一つです。


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