東京 八王子 印鑑文字工房 楽善堂の店長が印鑑や文字の魅力を語る
印鑑の楽善堂 四代目店長 平澤 東のブログ



はんこ屋の使う“はんこ”

2020年03月19日 お知らせ

印鑑 八王子 楽善堂
──── 八王子で印鑑を作り続けて110年 ────

こんにちは。東京、八王子で印鑑を作っている職商人(しょくあきんど)の平澤 東(とう)です。

彼岸入りをして暖かくなってまいりました。一方で世界を騒がせている新コロナウイルス、1日でも早く収束してもらいたいと願うばかりです。

前回のブログで予告したように、今回は「はんこ屋の使うはんこ」について書いてみます。私は下記の3本を使っています。

1.実印 象牙・直径15ミリ、長さは45ミリで鞘付(さやつき、キャップ付きのことです) 印鑑ケースは腹ワニ革。書体は太字の篆書。姓名のフルネーム彫り。3年間の修行を終える時に、師匠が文字の字入れ⇒私が荒彫り(あらぼり)⇒師匠が仕上げの作業。こんな流れで実印は出来上がりました。どの弟子たちも修行を終える時に、師匠が象牙で作ってくれるのが伝統でした。

2.銀行印 象牙・直径12ミリ、長さは45ミリ。ケースはトカゲ革。書体は細字の篆書。姓のみの彫り。中学3年の時に、父が作ってくれました。まだ、昭和の時代だったので、篆書でも細字の篆書でした。洋服ほどの流行はありませんが、はんこの作風も戦前から昭和の40年代くらいまでは、はんこ屋でも細字の篆書を提案していました。今は、お客様のご指定のない場合は吉相体(きっそうたい)が主流になっています。

3.仕事印 黒水牛・直径10.5ミリ、長さは60ミリ。ケースは牛革、金枠付きでなく、小銭がま口タイプの形状。書体は太字の篆書。姓のみの彫り。シャチハタ式では不可、という場合が出てきて、30歳を過ぎたころに作りました。このはんこだけが長さ60ミリです。現在ははんこの長さはほとんど、60ミリになりました。

文字は3本とも、篆書(てんしょ)です。やはり、伝統的な書体を使っています。

世の中に流行している吉相体(きっそうたい)は、使っていません。20世紀になって出てきた書体なので、自分用には取り込むことに踏み切れていません。

墨田区の両国で3年間、印鑑彫刻の修行をしましたが、この時、師匠がお客様によく言っていた言葉に、「我々、はんこ屋は、吉相体(印相体とも言う)は使っていないんですよ。」でした。

ご来店のお客様から「印鑑に印相があるって、本当なんですか?」と聞かれての答えがこの言葉でした。大切なのは、お使いになるお客様がご自分のお好みに合った書体を選ぶことだと考えます。店頭では、お客様がお決めやすいように印材(象牙や黒水牛・つげなど)・文字や、書体のご説明は十分にさせていただいております。

下から象牙の実印、銀行印、黒水牛の仕事印です。実印の小さな朱肉部分のフタは牙ぶた(げぶた)といって象牙で出来ています。今はほとんどがプラスチック製になりました。
ケースを閉じたところです。下から実印の腹ワニ革。銀行印のトカゲ革。仕事印の牛革です。
実印の側面に師匠が彫ったという証(あかし)に側款(そっかん)があります。「昭和甲子五月 瑞雲山人 刻」とあります。昭和の甲子は昭和59年でした。修行を終えた年が十干の初めで、とても良い記念です。
実印、反対側の側面は金丹(きんたん、長方形の金色部分)を入れた象嵌(ぞうがん)職人、山崎民生(みんせい)さんの銘入りです。この山崎さんも東京の下町、墨田区にお住まいでした。
銀行印の印影です。細字の篆書です。文字自体が細くて文字も小さく入れるので、文字以外の白い部分が多く、「明るくてさっぱりとした作風」になります。


コメント

  1. 茶の実 より:

    素晴らしい印章ですね。
    それぞれの思い出の込められた唯一無二のもの。
    ハンコはその人の履歴書のようでもありますね^ ^

    • inkanreform より:

      拝復。茶の実 様
      コメント、ありがとうございます。本来、店側が言うべき内容を
      茶の実様が代弁していただきました。感謝です。  店主  拝

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